世界は割れ響く耳鳴りのようだ

4/27
前へ
/1036ページ
次へ
 漕ぎ続けて十五分ほど。辺りは住宅地から木々へと変わり、道も坂道へと変わっていった。  長い坂道を立ち漕ぎで制覇すると、目の前には開けた空間が表れた。手入れはされていないものの、数センチしかない低い草地に屋根がついた小さなベンチの休憩所が一つだけ。  そのベンチに一人、同じ学校の制服を着た者がいた。後ろ姿だが女性用の制服と外見で性別は女だとわかる。  彼女は気が付いたらしく、海斗に振り向いた。手には棒付きアイスを持ってくわえていた。  急いで食べ終えた少女はゆっくりと歩いてきて、目の前で立ち止まり脇に手を置いて見上げた。  背は平均より低い。ショートヘアで猫のような大きくて丸い瞳。堂々とした態度や表情から強気な性格だとわかる。
/1036ページ

最初のコメントを投稿しよう!

272人が本棚に入れています
本棚に追加