赤い誘惑

2/65
271人が本棚に入れています
本棚に追加
/1036ページ
 五分後。自宅前に一台のスポーツカーが急ブレーキで停車した。  運転席の窓が開いた先に、真剣な眼差しの雪江が座っていた。助手席には時子もいる。 「乗りなさい」  促されるまま後部座席に座った直後、車は急発進して少し驚いた。 「おい!」 「まず座りなさいよ。事情話すから」  言われるがまま後部座席に席を下ろした。 「事情を説明しろ」 「美々原さゆみが誘拐された」 「は?」 「連絡がとれない。時子からもアンタからの電話もに出ない。監視させてる奴に聞いても曖昧だし、多分昨日の隙を突かれた」 「いや、ちょっと待て」 「やっぱり監視は二人一組にさせるべきだったわね。やっぱり“あっち”からも応援を貰っとくべきね……。それにしても、本部の奴らもとことんムカつくわ。あんな馬鹿共を野放ししとくなんて信じられない」 「待て待て待て待て。話がまったくわからない。誘拐された? は?」
/1036ページ

最初のコメントを投稿しよう!