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「納得してもらったかしら?」
誇らしげに笑顔を見せるさゆみを直視することができずに顔を反らした。
それが更にさゆみを笑顔にさせたのは言うまでもない。
「一応だけど私は自己紹介したから、今度はアンタの番」
「名前は知ってただろ」
「知ってても。自分の口から私に向かって言って、初めて自己紹介になるんだから」
面倒だ。
ただでさえ無口で無愛想な海斗にとって、自分の名前を他人に教えることすら嫌う。入学式直後のホームルームで自己紹介があったが、名前しか言わず見事に重い雰囲気を作り出した張本人でもある。
「ほら」
いつまでも時間を食っている暇はなかった。
「…………楯山海斗」
「上出来。よろしくね海斗」
催促されて渋々と名前を言っただけなのに、さゆみはとても嬉しそうだった。
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