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――いらないもの、必要のないもの。あってはいけないもの。
けれど、言葉がようやく脳へと伝わり意味を理解できた時、アルビスの心は、冷たく凍りついてしまう。まるで自分の存在を否定されたような気持ちになった。
持っていてはいけないものを、なぜ自分は持っているのだろう。それが一体どんなものなのかもわからないのに。
ふいに、背中に伸びた腕に力がこもった。一層強く抱き寄せられ、薄汚れた布越しに硬い骨の感触がある。ごつごつした祖母の体と、心臓の優しい鼓動。嗅ぎ慣れた祖母の匂いは、不安に染まりつつあったアルビスの心を徐々に落ち着かせてゆく。
祖母の右手がアルビスの頭へと伸び、指に髪を絡ませながら撫でられた。何度も何度も祖母はその行為を繰り返す。
「大丈夫だよ」
アルビス、と名前を囁かれる。そして、自分自身にも言い聞かせようとするかのように、祖母は力強い声色でつぶやいた。
「おまえが大きくなれば、いずれあの力は消える。それまでの辛抱だ。魔力さえ消えれば、あいつらの監視の目もなくなる。普通の暮らしをさせてやれるんだ。……わかっておくれ」
すがるように、祈るように。祖母の声はアルビスの耳と、その小さな胸を打つ。
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