―第十五話―

3/5
142人が本棚に入れています
本棚に追加
/94ページ
【主劇・あやめ】 あやめ「…………」 結局ここに来ちゃうんだよね。 どうしても最後にここに来たかった。龍馬さんとの思いでの場所。 最後にここだけ見て、 ……京都を出る。 龍馬さんから離れる。 私にはその資格はないから。 龍馬「…あやめ」 ! あやめ「………龍馬さん。」 龍馬「おまん…なぜ」 あやめ「……私、出ていきます。」 龍馬「………」 私には、龍馬さんと一緒にいることができない。 あやめ「だから…さよなら………。」 龍馬「何でじゃ!」 ガッ! あやめ「!」 逃げようとしたけど、龍馬さんに手首を掴まれてしまった。 龍馬「何で出ていく!ワシは気にしちょらんきに!あやめが無事なら―――」 あやめ「―違うんですっ!」 龍馬さんの手が緩んだ気がした。 あやめ「違うんですっ。私が…私がダメなんです!」 龍馬「……あやめ…」 あやめ「私が辛いの!どんなに時が経っても、きっと忘れられない……!あなたのその笑顔に、私はふさわしくないから……だから―――…」 ……ギュッ あやめ「――…」 ……まただ。 私が辛いとき。 私が悲しいとき。 いつも、いつも。 龍馬さんは優しく抱き締めてくれるんだ。 心を洗ってくれる。 龍馬「……泣かんでいい。」 あやめ「ぇ……。」 ……やだ。 私、泣いてる。 龍馬「……何でわかってくれんのじゃ。ワシがあやめを守る。それでえぇがじゃ。」 あやめ「でもっ……」 龍馬「ワシが洗っちゃる。」 ! 龍馬「おまんの悲しみ、おまんの辛さ、おまんの苦しみ……おまんが嫌だと、辛いと思うものすべて洗っちゃる。…甘えてくれんか、少しは。」 あやめ「……」 ………龍馬、さんっ…! あやめ「……あまえて、いいの…?」 龍馬「えぇに決まっちょる。…の?」 あやめ「……あぁぁぁぁぁぁ!」 …泣いていいんだ。 甘えていいんだ。 それからずっと、大声で泣いた。 涙と一緒にすべてを。 悲しみ。 辛み。 苦しみ。 自責の念に刈られ、縛られていた心は 大好きな龍馬さんに洗われた。 ……ありがとう。
/94ページ

最初のコメントを投稿しよう!