Three days ago.

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少女に呼ばれ、部屋を出ていく二人。そして二人を呼んだ少女もまた、桃華に頭を下げて去る。狭い部屋に残ったのは桃華一人。 真っ白い部屋。変わらぬ温度の景色。音を立てても真っ白い壁に吸収されてしまう。部屋の支配者は桃華ではなく、無音。 真っ白。無音。一人。発狂するには十分に材料が揃っていた。 流石に発狂はしない。白い世界に慣れていた。 なのに、なのに…。あの二人が来てから身体がだるい。思考すら放棄したい。ここではないどこかに行きたい。 「…逃げなきゃ…。こんな得体の知れないところから逃げないと……」 何かに憑かれたようにずる、ずる、ずる…と動かない足を無理矢理動かし、ぶつぶつと呟きながら窓に寄りかかる。冷えた硝子は体温を奪い、身体を冷やすがそんなことは気にならない。 弥月と汀に出会ってからしている何か別の人間の思念が頭の中をかき回すような不快感とだるさ。いや、声が。声が頭の中で幾重にも反響している。 不快な声が。耳障りな声が。嫌な、厭な声が。聞きたくもないのに聞こえてくる声が。止んでほしいのに止まない声が。声が、する。声が。声が。声が。声が。声が。声が。声が、声が、声が。声が、声が、声が、声が。声が声が声が声が声が声が声が声が声が声が声が声が。声、が、こえ、が、コエ、が、コ、エ、ガ。声が反芻して止まない。 「<      >」 生気のない虚ろな瞳、虚ろな口調で呟く。 それが、最後。 その時を境に、笠原桃華は姿を消した―
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