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この女は、何だ。
「ごめんなさい。まさか人だと思わなかった。・・・汚物にしか見えなくて」
誰が汚物だ誰が。明らかにそのホースはまだ俺に向いてるぞ。そしてスイッチを入れようとするな。悪意丸出しだぞ。
まさか屋敷に入って、門一番にホースで水をかけられると思わなかった。勿論全身びしょ濡れだ。
口にくわえた煙草が湿って気持ちが悪い。
「あらあら大丈夫?和政さん」
優しくハンカチで頬を拭ってくれる俺を連れてきた女。…名前なんだっけか。
「あ、ああ…。別に、たいしたことは」
「チッ」
お ま え
聞こえたぞ今の舌打ち。思いっきり。わざとか、やっぱりわざとだなこのアマ・・。
紅い眼をした女は舌打ちして一度俺を見た後、咲き誇る薔薇花壇の水やりを再開した。
だがそれを隣に居る女が引き止める。
「海夜。後で私の部屋にいらっしゃい。話したいことがあるの」
「……」
海夜と呼ばれた女はひとつ頷き、向こう側にある花壇へと水やりに行ってしまった。
「ごめんなさいね。和政さん。彼女、悪い子じゃないのよ」
「………………別に気にしてない」
初対面の相手に水を浴びせ、汚物呼ばわりし、挙げ句人の気遣いに舌打ちするような子が悪い子じゃない、ね。
イライラを抑えるために新しい煙草を取り出し、火を点けた。
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