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「………朝か」
窓から漏れる日差しが部屋を明るく照らしていた。天気も良く、清々しい気分だと言いたいところだが、実際はそんな気楽なもんじゃない。
深夜、海夜に追い出され、自室に戻った俺は、自己嫌悪に陥っていた。あれはやっちゃまずかっただろとか、欲求不満なのかとか。たまに海夜の寝顔が浮かんできたりして焦ったりとか。とにかく、悶々と考えていたら、ろくに睡眠も取れず朝を迎えてしまった。
口に煙草をくわえ、気分を落ち着かせてみるが、根っこの部分ではまだ気にしているらしい。
とりあえず、あれは俺が悪かったんだ。朝一番に謝っておこう。
そう結論づけて、立ち上がり、服を取ろうとしたとき、控えめなノックがした。
「御主人様?もう起きていらっしゃいますか?着替えをお持ちいたしました」
「ああ、どうぞ」
失礼します、と部屋に入ってきたのは、昨夜遥が花梨と呼んでいたメイドだった。
花梨の手に持っていたのは洗濯された俺の一張羅だった。それを受け取ろうと手を伸ばすが、花梨の手からぼとりと服が落ちた。手が滑ったのかと思い、拾おうとしたが、花梨は丸くて大きな瞳を見開き―…
「な、なんで服着てないんですかああ!!!」
「…いや、下は履いてるし、いつもこれで寝てるんだけど」
「えええ!?ええええ!!」
顔を真っ赤にして花梨は意味不明な言葉を発し続けている。
自分の身体を見下ろすと、ちゃんとズボンは履いていた。着てないのは上半身だけだ。
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