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「御主人様、食べ物に何かアレルギー等はありませんか?」
「ああ、大丈夫だ」
焼きたてのパンを頬張り、隣に立つ花梨を盗み見る。
成る程。悪い気分はしない。よくテレビでやけに興奮した男がメイドに対して"萌え"と言うが、少し、ほんの少しわかる気がする。…やばい。俺ここにきてなんか変態じみてきた…。
そんなくだらないことを考えていたが、中々食事にやって来ない人物が居ることに嫌でも気づかされた。
「…あいつは、まだ来ないのか?」
「?ああ、お嬢様のことですね。お嬢様は朝が苦手で中々お目覚めにならないんです。一応お嬢様の分の朝食も用意してあるのですが…」
「……おい。まさか、あれじゃないだろうな」
誰も座っていない席のテーブルに昨晩の食卓で見たのと同じサラダがひとつ置かれていた。嫌な予感がして、それを指差して花梨に確認を取ると、
「いいえ?そちらがお嬢様の朝食になっています」
何事も無いように、それが当然だという物言いだった。何で、無理矢理にでも食わせないんだ。ベジタリアンどころの話じゃない。栄養失調はおろか下手したら死ぬぞ。しかも、さっきの言いようから考えると、少なくとも海夜は毎朝朝食を摂っているわけではないとわかる。
目の前で悠々とコーヒーに飲む遥に一言言いたくなった。いや、言うべきだろ。
「あんた…、少しあいつを甘やかしすぎなんじゃないのか?好き嫌いが多いのかは知らないがもう少し料理の数と量を増やすべきだろうが」
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