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俺の発言に遥はきょとんとした顔をしたが、すぐにまたいつもの微笑に戻っていた。
「奥さんのことがそんなに心配なのね」
「な…っ、ちが」
「御主人様、顔が真っ赤ですよー?照れてるんですか?」
俺の顔を覗きこんでくるにやにやと笑う花梨が今は少し憎たらしい。とりあえず頬を摘んでおいた。
「い、いひゃいれすうー」
「いいか、俺は、照れてない」
「で、でもかおまっか…いひゃいいひゃい!!ごめんなひゃい!」
手を離すと、花梨は唸りながら頬をさすっていた。俺達のやり取りを見ていた遥はくすくすと笑っている。
「大丈夫よ。海夜にはビタミン剤を渡してあるから」
「ビタミン剤…?」
「ええ。この家に使える優秀なバトラーが作ったものをね。最低限の栄養はそれで補給させてるわ」
「そういうことを言ってるんじゃ」
「でもそうねえ」
「少し甘やかしすぎかしら」
わざとらしく考えるような仕草に少し違和感を感じた。その違和感が何なのかわからない。
「花梨」
「はい、奥様」
「今日の夕食は海夜に肉料理を用意してちょうだい」
「ですが、お嬢様はお肉は食べないと常々おっしゃって…」
「御主人様がわざわざ指摘して下さったんだもの。きちんとそれに従わなければね」
そうでしょう?と俺に同意を促す。
肉、嫌いなのか…。少々強引だが、そうも言ってられない。海夜の細さは異常だ。細いからスタイルが良い、なんて誰が言ったんだろう。その領域を逸脱している場合何と言えばいいのか。
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