水も滴るいい男?

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「気持ちいいでしょう?身体全身に快楽が流れ、血を取り込んだ身体を悦ばせる」 「…………っ!」 「麻薬や覚せい剤の比ではないのよ?なのに人体には何の影響も及ばない。…まあ依存性が高いのが唯一の難点ね」 10分くらい経ってやっと息が整ってきた。信じざるをえない。アレは危険だ。頭の中にある理性を壊されかねない。 「………何故、この家の女が主人に処女をやる必要があるんだ」 ふと浮かんだ疑問を女に投げ掛けると、一瞬だけ女は強張った顔をした。 「この血の快楽は、この家の血を引く男には制御が出来る。ただの人間に飲ませるとその快楽に溺れ、いつしかその人間の人格が壊される。貴方は遠い昔の当主の血縁だからこそ、今も耐えられたのよ」 「…それで?」 「ただ、もう一つ、この血を渇望し、制御し得る種族がいる」 「吸血鬼よ」 お伽話にしか出て来ないだろそんなもん。現実に居るわけないだろんなもん。 そんな表情に出ているであろう俺を無視して、女は続ける。 「彼らは隙あらば私達の血を狙ってくる。貪るためにね。彼らから完全に逃れる方法は最初に言った主との儀式。純潔の血は何よりも高潔で神聖な嗜好品。主がそれを飲めば、私達の血は主の力によって護られる。吸血鬼でももう手出しは出来ない」 「……力?」 「吸血鬼にとって、一番怖い力は、愛なのよ。彼らはそれを理解することが出来ない。曖昧でかつ抽象的なものだから、それを打ち破る方法もわからない」 ある意味、一番憐れで、可哀相な生き物よ。愛の変わりに変哲もない欲だけを満たそうとしているの。 そう言う女の顔は心当たりがあるのか悲しげだった。 「……俺に何のメリットがある」 「永遠の快楽を約束するわ。私の娘を通してね」
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