全ての始まり

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風を切るような荒い音と幾つもの、早い足音。 ひとりは、布のようなものを深く被り 姿が見えない小柄の者。 もうひとりは、剣を腰に差し、身体だけをマントで隠している青年だった。 青年は、もうひとりの腕を掴み、勢いよく森を駆け抜ける。 後ろからは、複数の怒声と走る音。 ふたりは明らかに追いかけられていた。 「アル、いい。もういい」 布から頭を出し、そう言葉を発したのは薄いパープルの髪色が特徴のかわいらしい少女。 その少女に呼ばれたアルという黒髪の青年は、足を止めた。 「何いってんだよ!ユリカ、お前逃げなきゃ殺されるんだぞ!?」 少女の名前は、ユリカ=サイア。 もうすぐ18歳になる、年頃の娘だ。 アルという青年は、ユリカにそう怒鳴り、腕を握る手を強めた。 「…元々わたし、儀式が嫌とか逃げたいとか言ってない」 痛いわ、とアルの手を振り払おうとするが、余計に彼の力が強くなるだけだった。
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