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ザァァ……。
少女は風によってたなびく髪を押さえて、風の吹いてきた方を向いた。
そこには、思い思いの正装をしている大人の人達がいる。
並み居る人達の中で、少女はひとりの青年だけをただひたすらに見つめていた。
風とともにひらひらと薄桃色の花弁が宙を舞う。
少女の視線に気が付いた青年は少女にだけ向けて、にこっと笑った。
「なぁ、花音」
少女の隣に座っていたツインテールの女の子(幼女と見られがちだがこれでも少女と同い年だ)が少女に話し掛けた。
「どうしてうちの兄がいいんだ?」
この女の子と青年は兄妹らしい。
「野薔薇には分かんないよ。
きっとね」
「そうなのか?」
花音と呼ばれた少女が野薔薇と呼ばれた女の子の頭を撫でる。
「いつかきっと分かるよ……お兄ちゃん――湊の凄さはね」
入学式が始まった。
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