コースター

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いつもの時間に所定のカウンター席に、名前も知らない僕の想い人が座る。 閉店間際でお客はその人だけ。 いつものアイス珈琲をコースターに乗せ差し出し、いつもと様子の違うその人に、どうしました?と、つい聞いてしまった。 「昨日、好きな人に気持ちを伝えたんですが……。 気付いてもらえてないのかも……。 珈琲ご馳走さまでした」 殆んど口を付けていない珈琲のお金を置き、去ろうとするその人の背に、有り難うございました、と一言言うと、何も言わずにその人は出ていった。 カウンターから飲んだグラスとコースターを手に取った時だった。 いつもは気にならないコースターが気になり、ふと捲るとたった一言……。 ――《好きです》 明日、あの人が来たら返事をしよう。 ――《僕もです》 と、短いけれどコースターに想いを込めて……。
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