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三月も末。
看護師国家試験の合格通知を手に彰(アキラ)は螢院(ケイイン)病院の前にいた。
「やっぱりでっかい病院よね」
世界レベルの医療を提供してきた螢院病院は就職希望者も多く、看護師不足が取り沙汰される中、倍率は驚異の30倍の狭き門。
ほとんど新卒を採らないことでも有名で、大半の職員は他の病院である程度の実力を付けてからヘッドハンティングされてくるか、院長からの紹介状を手に自ら売り込むかのどちらかで構成されていた。
国家試験より難しいそれに挑戦したのには訳がある。
職員はあらゆる面でプロフェッショナルを求められたが他の病院とは比べ物がないほど福利厚生が充実していた。
何より一人暮らしをする上で必要なものは全て揃っているのが良かった。
元手ゼロで暮らし始められるのは親がいない彰にとって最高の条件だった。
しかし歴史ある螢院病院にはあらゆる噂が付いて回っているのも事実。
要人が院長を指名してVIPルームに籠ることもまれではなく、そういうときは見ざる聞かざる言わざるに徹しなければその命は保障されないとか云々。
「それでも受かってラッキーラッキー!」
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