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まさに時代が動いている証拠だとでも言えば聞こえが良いかも知れないが……
「はい。おしまい。お疲れ様でした」
「ああ。ありがとう。今日の検査は何時くらいになるかな?」
「14時頃の予定ですけど……」
「わかってる。急患が入れば私は後回しだろう?」
「はい……詳しくわかりましたらお伝えに上がりますね」
「頼むよ」
VIPルームの一つで過ごす初老の彼は某IT企業の社長だ。
初出勤初顔合わせで札束を握らされたとき、なんて淋しい人だろうと憐れんでしまった。
もちろん、受け取れませんと即座に固辞するとそれが彼の琴線に触れたのか以降、彼は私に目をかけてくれているようだった。
「七瀬さん、VIPに神威様がいらっしゃるわ。部屋の準備お願い」
「はい……珍しいですね。朔様も埼様もここのところおでましはなかったのに」
「埼様のお加減が悪いみたい」
「すぐに準備します。織原さん、支柱台、モニター、体温計持って5050号室に行って。換気して、室温23~25度、湿度60%前後に保って」
「は……はいっ」
なんだその細かい設定は。
とりあえず急げと言われたから気にしてられないっ。
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