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巷で話題のドクターヘリもいち早く導入した院長は本当に先見の明があると思う。
第三次の高度医療を提供する螢院の救急外来は常にごった返していた。
まさに戦場。
阿鼻叫喚の地獄絵図。
「痛ーい!」
叫ぶ元気のある患者はまだいい。
医師がばしばしと肩を叩き意識レベルの確認しても沈黙の患者は腹が血まみれになっていた。
「……」
刺激的過ぎる。
息を飲む彰に間近にいた医師が苦笑した。
「埼君の迎えかな?」
「はい……」
「後数分で終わるから待ってね」
「はい……いつもにもましてえらいことになってませんか?」
「あー……10分ほど前に2キロ先のインターの交差点で観光バスと4トントラックがクラッシュしてね……50人近く重軽傷を負ったんだわ」
「まずいですね」
「そ。救出されて重症なのが内の担当で……今ヘリとドクターカー折り返してったとこ」
後何人来るかなあ……血みどろになった手袋を脱ぎ、ぺしっとゴミ箱に投げ捨てた。
「七瀬、悪いけどラインの準備して」
「してるわよ……油売ってないでさっさと駆血帯巻きなさいよ」
「はーい……」
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