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「共観でお願いしますよ、田邊先生」
現れたのは脳外科の里見医師。
「部屋が空き次第主科変更して即日引き取りますから」
「部屋空いてんじゃん。それも3床。がんがん救急運ばれてくるから救急のベッドもう埋まっちゃうんだけどなぁ?」
「嫌な脅しかたですね」
「勿体ぶらずに連れってよ。どうせオペには里見が入ってくれるんだろ?」
「……これから外勤だからオペは別のものに任せるつもりだ」
「ふぅーん」
どうにも険悪な雰囲気だ。
「織原さん、埼君検査終わったから戻るわよ」
「はっ、はい!」
ストレッチャーに移された少年は如何にも病弱そうな儚い印象が拭えなかった。
「……君たち何している?」
姿を見せた院長が辺りを見渡し嘆息する。
「また部屋の貸し渋りかな?」
「そうです。どうにかなりません?」
「田邊!」
「忙しいのはわかるが貸し渋りをするくらいなら病床を10床くらい減らすか?」
「先生!」
「次の会議の議題にしよう。交通事故なのだろう?まだまだ頭部外傷は来るだろう。悪いが院長命令で残りの3床は必ず入院を受けるように。無論主科は脳外科だ。責任持って当たってくれ」
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