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「……わかり、ました」
不承不承頷く里見医師を尻目に田邊医師はざまぁみろと言わんばかりに舌を出していた。
「手の空いている病棟看護師も数名応援に来させるからしばらく踏ん張ってくれよ、田邊君」
「はーい。了解です」
その声を聞きながらストレッチャーを押して戦場から離脱した。
「発作は治まったみたいだけど念のために検査入院になるみたいね」
病棟に戻り、看護師4人がかりで慎重に病室のベッドに移す。
「ん……」
目覚めた埼は七瀬を見知っているらしくほやんと柔らかく微笑んだ。
「ななちゃんだ」
「はい、埼君具合は?」
「もうなんてないよ」
「御家族の方は?」
「ちぃちゃんと来たの」
「千鶴君と?」
「うん。みんな忙しくって身動き取れないからって兄様がちぃちゃんと先に行っててって」
「そう……じゃあ千鶴君が手続きをしてくれているのね」
話は見えないが付き人なのだろうか?その千鶴君という人は。
「うん。千秋ちゃんも検査になっちゃったって気にしてたから、ちぃちゃんが来たら先に千秋ちゃんに逢うように言ってね?」
「承りました」
僅か10歳の少年に恭しく応える七瀬。
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