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病室から出ると入れ違いで入ろうとする人とぶつかりそうになる。
「え……」
「あ。いつもお世話になってます」
ぺこりと頭を下げた相手に七瀬は微笑む。
「千鶴君、もうお話は済んだの?」
含む意味を感じさせるその言い方に引っ掛かりを覚える。
「えぇ。伺って来ました」
千秋ちゃんは『千鶴君』が神威家と関わりあることを知らないのだろうか?
確かめるまでは不用意なことは言えないが……面をあげたその顔は千秋ちゃんが自慢したくなるのも頷ける優しい面差しの少年だった。
それにしても何処かであったことがあるような?
考えている間にすれ違いざまに千鶴君に低い声で耳打ちされた。
「……そんなに珍しい?屋上から飛び降りるのは」
はっとして振り返るも彼はもう病室に入ってしまった後だった。
さらっと認めた!
でもあの言い方は面が割れているんだからばらしたらどうなると思う?と脅されているようなものだ。
納得いかない……口が軽いと思われたってわけ?
「織原さん!次行くわよ」
「はい!」
千鶴君のおかげで、七瀬の背を追いながらもなんとなくもやっとした気持ちを抱く羽目になった。
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