第1章 1話“しにがみメール”

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 鮮やかに色付いていた桜はすっかり散り始め、新緑の葉が芽吹き始めた5月。 茶色いレンガで舗装された遊歩道は温かな日射しに包まれていた。  天峰大学付属森羅学園、高等部中庭。 「……どうしよう」  少々よれた黒の学ラン、明るい茶髪。 男子生徒にしては高さが足りない身長に、筋肉の盛り上がりがまったく無いなだらかな体つき。  彼の名前は桐谷草弥という。 この学園の生徒で、今年度で高等部の2年生に進級した。  しかし、その困惑に彩られた顔はあまりにも幼かった。 誰が見ても中学生ぐらいにしか見えない顔は青ざめている。  視線の先には、剣の形を模したキーホルダーがあった。 「なんでこんなところに看板があるの!? チェーン切れちゃったじゃん!」  人目をはばかる事なく涙声で叫んだ桐谷。 人差し指ほどの長さがある剣のキーホルダーは、銀色の鞘に透明なガラス玉がついており、さらに鞘から抜き出せるという凝ったデザインが施されていた。
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