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鮮やかに色付いていた桜はすっかり散り始め、新緑の葉が芽吹き始めた5月。
茶色いレンガで舗装された遊歩道は温かな日射しに包まれていた。
天峰大学付属森羅学園、高等部中庭。
「……どうしよう」
少々よれた黒の学ラン、明るい茶髪。
男子生徒にしては高さが足りない身長に、筋肉の盛り上がりがまったく無いなだらかな体つき。
彼の名前は桐谷草弥という。
この学園の生徒で、今年度で高等部の2年生に進級した。
しかし、その困惑に彩られた顔はあまりにも幼かった。
誰が見ても中学生ぐらいにしか見えない顔は青ざめている。
視線の先には、剣の形を模したキーホルダーがあった。
「なんでこんなところに看板があるの!? チェーン切れちゃったじゃん!」
人目をはばかる事なく涙声で叫んだ桐谷。
人差し指ほどの長さがある剣のキーホルダーは、銀色の鞘に透明なガラス玉がついており、さらに鞘から抜き出せるという凝ったデザインが施されていた。
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