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たっちゃんとゆいちゃんは、公園の壁の裏、可笑しくってクスクス笑ってしまいました。
二つ上のお兄ちゃんになるたっちゃんは、小さな人差し指を立てて、自分だって笑ってた癖に、ゆいちゃんに「しーっ」て注意しました。
まだ、たっちゃんみたいにいっぱい喋れないゆいちゃんは、お兄ちゃんの真似して「しーっ」てやりました。
緑いっぱいの夏の午後でした。
公園の木では、何千という蝉が、たっちゃんは、ゆいちゃんは、ここだよここだよと、訴えるように鳴いていました。
二人は、お父さんに連れられて公園に、遊びに来ていたのです
コンクリートの壁は、ヒンヤリしてて、とても気持ちよくって、それに、近くで二人を探すお父さんの声が、とても心地よく耳に響いて、それでたっちゃんもゆいちゃんも、声を出しちゃいけないのにクスクス笑っちゃったのでした。
「たっちゃんどこかな。
ゆいちゃんどこかな」
お父さんは、二人の隠れている壁のそばを、ぐるぐるぐるぐる回りながら、そう言ってました
いつもはすぐ「ばあっ」てお父さんを驚かすんだけど、たっちゃんはもう少し、お父さんを困らせてやろうと思いました。
公園から40キロ程度離れた原発が、核爆発を起こしたのは、そんな時でした。
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