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もう、揺れる炎がお化けみたいに見えて、怖くて怖くて仕方なかったのです。
たっちゃんは一秒でも早く、お父さんがお母さんが待ってるはずのお家に帰って、ぎゅっと抱き締めて欲しかったのだけど、まさかゆいちゃんを一人そこに残す訳にもいかず、なんとかゆいちゃんに立って欲しくて、泣き叫ぶように言いました。
「ゆいちゃん。
お家帰らないと、パパ怒っちゃうでしょ」
ゆいちゃんは、お兄ちゃんが怖くって、それでも暑くて、もう立てなくて、わんわん声を上げて泣きました。
「ゆいちゃん泣かないで。
お家、帰ろ」
そう言うたっちゃんの目からも、ボロボロ涙がこぼれていました。
二人は、早くお父さんに、お母さんに会いたいのに、辛くって悲しくって、もう泣くことしかできませんでした。
二人は「パパ、ママ」と泣きましたが、炎がぼおぼおと答えるだけで、誰も助けには来てくれませんでした。
ゆいちゃんの手を握っていた、たっちゃんの手が、するっと下に抜けました。
たっちゃんが見ると、ゆいちゃんの小さな体は、もう半分以上溶けていました。
たっちゃんの顔も、汗だと思っていたのは、液体状に溶けた顔で、もう、あのふっくらしたホッペは、ありませんでした。
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