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あまりにも近い距離に、左側に神経が集中する。
肩が触れそうで触れないこの微妙が距離が、俺の心をざわつかせる。
「お待たせしました。
店は閉めましたので、邪魔をする人はいませんよ?
良いアドバイスは出来るか分かりませんが、お話しだけなら聞けます」
そう言って、マスターは優しく微笑んだ。
その笑顔に俺はドキリとした。
でも、この笑顔は俺だからじゃない……。
俺が常連客だから……。
だから優しくしてくれるんだ。
勘違いしそうな自分に言い聞かす様に、心の中でそう呟いた。
そして、まるで他人事の様に、俺はマスターに話し始めた。
「好きな人が居るんですが、どうも最近、恋人が出来たみたいなんですよ……」
マスターは黙って俺の話しに耳を傾けてくれていた。
「それで、諦めようか悩んでいて……。
マスターならどうします?
好きな相手に恋人がいたら……」
マスターの方を見ずに聞いてみた。
怖かった……。
そんなの諦めて、忘れて、新しい人を探せと言われるのが……。
でも、それとは裏腹に、心の隅ではマスターにキッパリと忘れろ、諦めろと言われるのを望んでいる自分が居るのを感じた。
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