田宮 亮(タミヤ リョウ)

5/11
前へ
/12ページ
次へ
「…………私なら」 その先の言葉に耳を塞ぎたい。 マスターに話しなんてしなければよかったと、今更ながら後悔した。 「気持ちだけは伝えます」 予想外の答えにマスターの顔を見た。 「意外……という顔ですね」 クスリと笑うマスターにまたしても、胸が跳ねる。 本当にこの人はなんて綺麗に笑うんだろう……。 「恋人からその人を奪うとかじゃありませんよ? ただ、諦める為にも、自分の気持ちを言って、振ってもらう事が、前に進める第一歩だと思っています」 マスターは、それに……、と、話しを続けた。 「奇跡が起こって、自分を選んでくれるかもしれないでしょ?」 首を傾げながらそう言うマスターは、そう望んでいるかのように見えた。 実はマスターは辛い恋をしているんじゃないかと……そう感じた。 だからつい、ポロリと口から零れ落ちてしまった。 「マスターもそうなんですか?」 「さぁ……どうでしょう」 マスターは席を立ち、珈琲カップを手に持ちカウンターへと 戻った。 .
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

81人が本棚に入れています
本棚に追加