81人が本棚に入れています
本棚に追加
「…………私なら」
その先の言葉に耳を塞ぎたい。
マスターに話しなんてしなければよかったと、今更ながら後悔した。
「気持ちだけは伝えます」
予想外の答えにマスターの顔を見た。
「意外……という顔ですね」
クスリと笑うマスターにまたしても、胸が跳ねる。
本当にこの人はなんて綺麗に笑うんだろう……。
「恋人からその人を奪うとかじゃありませんよ?
ただ、諦める為にも、自分の気持ちを言って、振ってもらう事が、前に進める第一歩だと思っています」
マスターは、それに……、と、話しを続けた。
「奇跡が起こって、自分を選んでくれるかもしれないでしょ?」
首を傾げながらそう言うマスターは、そう望んでいるかのように見えた。
実はマスターは辛い恋をしているんじゃないかと……そう感じた。
だからつい、ポロリと口から零れ落ちてしまった。
「マスターもそうなんですか?」
「さぁ……どうでしょう」
マスターは席を立ち、珈琲カップを手に持ちカウンターへと
戻った。
.
最初のコメントを投稿しよう!