81人が本棚に入れています
本棚に追加
カウンターにアイス珈琲2杯分のお金を置き、俺は席を立った。
「話しを聞いてもらい有り難うございました」
「お役に立てたか分かりませんがね」
「いえ、マスターのお掛けで決心が付きました。
有り難うございます……」
おれはそう言って深々と頭を下げた。
マスターは、頑張って下さいね、とニコリと笑った。
この瞬間、俺は確信した。
――この恋は“終わった”と……。
「じゃあ、また来ます」
「お待ちしてます。有り難うございました」
俺はマスターに背を向けて店を出た。
そして外から店を眺める。
この店もマスターも偶然が重なって出逢えた。
今はその奇跡にも近い偶然に、終わった恋でも、マスターに出逢えた事に感謝している。
この店に来るのもあと数回だと思うと、名残惜しいく、中々、家へ帰る事が出来ず、結局は店の電気が消えるまで、少し離れた所で店を見ていた。
そしてマスターが店から出て行くのを確認してから、マスターとは逆方向の自宅へと足を進めた。
.
最初のコメントを投稿しよう!