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翌日、仕事を終えた俺は意を決して、店へと向かった。
いつもの時間にいつもの席に座り、何も言わなくても出てくるアイス珈琲。
これも次で最後になる……。
胸が締め付けられる思いでいっぱいだった。
昨日みたいな会話はなく、静かな時間が流れる。
カチャカチャとなる食器の音……。
申し訳程度に流れているBGM……。
忘れない様に頭に刻み込む。
名前も年も何も知らない貴方に、少女の様に恋をした。
それは間違いなく事実で、だから、この気持ちをこの店に……貴方に、置いてゆきます。
――“好きです”
コースターの裏に一言書き、いつもと変わらずにカウンターにお金を置き、ご馳走様でした、と言って、店を出た。
明日で最後にしよう。
気付いていたら、明日、振られるだろうし、気付いて無くても、気持ちは今日、店に置いてきた。
もう……未練はない。
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