1:『POLARIS』

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   あの頭のおかしい団体と関わることになった切っ掛けらしい切っ掛けといえば、新学期の始業式に闖入し『この世界は陰謀で成り立っているのであるぅ!』と一言で演説を始めた、それはそれは可憐な女生徒のせいだったのだろうか。  今思い返しても、いくらあんな美少女が平和過ぎる世の中に喧嘩を売る光景というのは、どこか陳腐で、新鮮な気がして、それ以上の感想は、取り敢えず主義の自分にとっては甚くどうでも良かった。  まぁ理由なんて、それだけで十分だということだ。  放課後になるまで終始その団体のことで頭をいっぱいにしていた俺は、チャイムが鳴ってから暫くして教室を出て、変な緊張をしながら部室の扉を叩いた。  そんな血の迷い迷った日から一ヶ月。   「会長、本当にあれで良かったのか?」  めっきり冷めたコンクリートの壁にかけられたカレンダーを捲り、俺は時の流れを感じる。  防諜だかで窓に覆われた分厚い暗幕の傍にある社長椅子に堂々と居座る“可憐な女生徒”へと目を向けた。 「会長ではぬぁい!『第三機関“ポラリス”』初代総統、バルテズ・キャトル会長であーる!」 「はいナオコ部長、お茶ですよ」  後輩のハルカちゃんが机上に差し出した茶を飛ばす勢いで唐突に立ち上がり猛然と後ろのホワイトボードを叩き付けると、勢いづいて反転。そこには一昨日から無断欠席中の我が“地域環境及び風紀・秩序に関する研究会”の一員、俺の一つ後輩のミツルの似顔絵、ディテールの凝ったプロフィールが描かれていた。 「ほい、今日の議題!」  
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