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揺れている。視界が安定してない。
あまりに揺れていて、物の輪郭がまるで蜃気楼のように歪んでいた。
はっきりしない視界の中で、俺の耳に届いてくるのは、周囲の人達の悲鳴や建物が崩れていく音。
しかし、中でも鮮明に俺の耳に届いてきたのは、一緒にいた仲間達の互いを呼び合う声だった。
揺れが収まった頃には、俺が今までいた世界は終わりを迎えていた。
さっきまであんなに賑やかで平和だった街が、人が…荒れ果て、朽ちていた。
そして、呆然と見回す俺の足元には仲間の───と血にまみれた自分の両手。
見ているだけで吐き気がした。見ているだけで全てが赤く染まっていく感覚がする。
感情に任せて叫びたいのに、喉が張り付いたようにうまく声が出ない。
この気持ちをどんな言葉で表せればいいのかも分からない。
「───────!!!!!!」
それでも俺は叫んだ。口が裂けるほど開いて、喉を潰すくらいの声で。
見上げた空は灰色。そしてそこには、神話に出てくるような空に浮かぶ城。
『君達は先程、大いなる地震に見舞われ、激しく披露し絶望していることだろう』
響く声。全てを見下した声は楽しげに話を進める。
そして、奴は言う。
『私の名は───────』
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