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千尋
「―――…なおらない…」
洗面台で後ろ毛を気にして5分がたった頃、あまりの頑固な私の癖毛に悪戯に手間をとられてる気がする。
奏
「―…邪魔。」
背後でボソリと呟く居候の小言に余計に焦りが増す。
千尋
「もうちょっと待って―…」
奏
「早くしろよ。
ていうか、その後髪なんなの?
目障りなんだけど。」
千尋
「変な癖がついちゃってるの…。
ん、もう――…いいや…。
はい、交代。」
私は半ば諦めてクルリと奏の横をすれ違う。
千尋
「奏ってば……またお父さんの部屋で寝てたの?」
奏
「…別にいいだろ。
伯父さんには好きに使えって言われてるんだから。
千尋には関係無い…。」
千尋
「奏が引っ張りだした楽譜片付けてる偲ちゃんが可哀想なのっ。
早く、顔洗って。」
奏
「千尋の癖に生意気。」
小さく鼻で笑われる。
日向奏(ひゅうがかなで)
星奏学院二年生。
奏も偲ちゃんも音楽科の生徒。
奏は偲ちゃんの弟で何故か家に住んでいる。
多分、父さんの集めた楽譜とか音楽集が沢山あるからかな。
奏と偲ちゃんの家は家の隣だし親同士も付き合いいいからどうしても仲良くなっちゃう、はずなんだけど。
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