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偲
「春から千尋も一年生。
俺達の後輩になるのは嬉しいんだけれど…
…はあ……、…超心配…」
温かいスコーンを皿に移して私の前に置く偲ちゃんはいつにも増して悩ましげだ。
こんなに美味しそうなスコーンなのに?
千尋
「あ、奏。そこのラズベリージャムとってくれる?」
口にティースプーンをくわえた奏が瓶に手を伸ばす。
奏
「―――……ん。」
蓋を開けてテーブルに置いてくれた。
こういう時、何げに奏は優しいのよね。
千尋
「ありがとう。」
偲
「もしもーし、千尋サーン?
奏君はともかく君の事ですのよ?」
千尋
「わわ、ごめんなさい!」
奏
「――…千尋。アレとって。」
千尋
「バターね、はい。」
プラスチック包みのバターの器を奏に差し出す。
奏のアレは近いもの。
ソレは遠い位置にあるもの。
長年の幼なじみの感で大体の事柄は理解出来てきた。
昔は奏が口数が少ない上に黙りな男の子だったから私がムキになって怒ったりしちゃったけれど……。
ああ、
今もたいして変らないわよね。
奏
「何1人でにやけてるの
気持ち悪い……。」
千尋
「…思い出し笑い?」
奏
「自分の事だろ。
…疑問符をつけるなよ。」
偲
「本当、心配っ。
お兄ちゃんは凄く心配だよっ」
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