22人が本棚に入れています
本棚に追加
/101ページ
サングラス集団の追撃を交わした後の張さんはきちんと赤信号で停車をする優良ライダーに変貌した。
別に日本の交通ルールを知らなかったわけではないようだ。
危険が去り安心すると理不尽なことに巻き込まれた怒りもようやく沸いてきた。
「一体これはどういうことなんですか?」
怒ってはいたが先ほどの張さんの射撃技術や躊躇なく引き金を引いたところを目の当たりにしたばかりだった為、つい丁寧語になってしまうのが情けない。
ただ語気は多少荒げて不服の意を隠すことはしなかった。
「すいません。どこかから情報が漏れてしまっていたようで」
何を勘違いしたのか張さんは追跡されたことを詫びた。
俺としてはなぜこんなバイクに乗せられ、銃撃戦に巻き込まれなきゃいけないのかを聞きたかったのだが通じなかったようだ。
なんと伝えれば刺激せずに理解してもらえるのかと考えたがなかなかいい言葉が思い浮かばない。
そもそも俺は今どういう立場にあるのかさえわからない。
誘拐されているのかとも思ったが誘拐犯が人質に拳銃を渡すなど聞いたことがない。
状況から考えて俺は張さんに仲間と勘違いされているに違いなかった。
その理由はさっぱり不明ではあるが。
かといって俺は張さんの仲間ではないですよ、といきなり言ってしまうのも躊躇われる。
仲間ではないものは先ほどのサングラスの男みたいに躊躇なく撃ち殺す性格なのかもしれないからだ。
なるべく刺激しないように張さんの誤解を解かないといけない。
それに俺は明日までに仕上げないといけない入札書類だってある。
最初のコメントを投稿しよう!