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山を降りてすぐ、アインが居た木を探す。 特別大きい木だから、すぐ判った。 近くに小石が山盛りになったままだ。 しかし、アインの姿は見えない。 木陰も、人ひとり立てるくらいの幅しか無い。 夕方には来るって言ってなかったっけ……。 木の側でぼーっとしていると、 「馬鹿?太陽はどちらにあるの?」 木の裏から聞こえた。 ……俺は馬鹿です。 木に背中を預けて、座って本を読んでいるアインがいた。 それが全く見えない程、木の幹は太い。 アインの隣に腰を下ろす。 「何しに来たのよ」 「何だろうね」 何しに来たんだ、俺。
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