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「で、やっぱり来たのね」 その日の夕方、俺はあの木の下に居た。 「好きにする、って言ったじゃん」 「天の邪鬼ね……」 それからはいつも通り、中身の大して無い話をしていた。 「夏と冬、どっちが好き?」 「何よ、急に」 「最近、暖かくなってきたし、もう夏になるんだなって感じしたから」 「夏は日差しが強すぎるわね。冬も雪が積もれば反射した日光が厳しいわ」 「そうですか……」 俺は他人の事なんて解らないし、他人が俺を解っているか解らない。 解らない事を避けがちに生きていた俺にとって、自分から話せるようになったのは、大きな進歩なんだろう。 誰に対してもこんな風に出来れば、この先の事も困らないだろうが。
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