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【反旗、赤、くれない】
抱きしめた肌に痛みすら感じる
海に沈んだこの国の中で
涙さえ光がさしこんで
赤色にきらめいていた。
弱々しく呟いた言葉を聞き取ろうと
耳をそばだて身を寄せる。
「私が死んでも志を忘れないで」と
彼女らしい他人を思いやる言葉
自己犠牲、大義名分の似合う彼女は
国の礎になったのだ。
動かなくなった彼女を
より一層きつく抱き
慟哭した。
赤い涙は海に溶けても
色は赤いままで
雫が落ちるたび
無力な波紋が広がる。
嗚呼、国よ、我が国よ
国はいずこに?
嗚呼、姫よ、我が妹よ
何故君が死なねばならなかった?
轟く大砲、吹き飛ぶ兵団
鉛玉に太刀打ちできるはずもなく
散り行く、その最期に
私は耳を傾けようぞ
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