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【指先に赤】
あ、切れたと思った瞬間に
滲み出る唇の赤
ゆっくりと、しかしなかなか終局にたどりつかない
もどかしい流血
わたしにはどうしても直せない癖がある
荒れた唇の皮をはがしてしまうこと
ささくれ、かさぶた
そういう治りかけのザラザラした皮膚を
そのままにしておけなく
触るたび剥がし
剥がすたび後悔する
じわりと痛みがきて
鉄の味が広がる
ほんとはその血の味も気に入ったりして
癖はなかなか直せない
その味に順応するがごとく
また指先はカサカサした唇にたどりつく
ああ
咥内に広がる鉄のいとしいこと
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