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しかし、少年は立ち上がると固まってしまった。
少年が驚きと焦りの混ざったような表情で見つめる先では、一人の少女が紙飛行機を拾っていた。
その少女は少年の視線に気づくと笑顔で近づいてきた。
その笑顔にはいろいろな感情が混ざり合っているようだった。
「……え…と…」
先刻まで誰もいなかった屋上に突然訪れた少女に、少年は声も出ないほど焦っていた。
それもそのはず、その少女は紛れもなく、その手紙を渡すつもりだった人物なのだ。
少女は拾った紙飛行機を手渡すと、静かな屋上でその声を響かせた。
「風が無いから飛ばないなら、風がある場所を探せばいいんだよ」
優しく響くその声は、ようやく少年の脳を動かした。
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