プロローグ

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   将来の夢       四年三組 野由原皐月  わたしの将来の夢は、お金持ちになることです。絶対。  なぜなら、お金がないと、大切なものをつかむことができないからです。  わたしの大切なものは、みんなお金で守れました。  あとで、ああすれば良かったとか、こうだったらなんてタラレバを言っていてもどうしようもなかったです。  お母さんがいなくなったのもそのせいです。  幸せをつかむ近道は、それしかないのだと知りました。  できれば知りたくはなかったです。 「どうしようもないことは、この世にはたくさんあるのだ」とお父さんに聞きました。 「なんで」とわたしは聞きました。  でも、お父さんは静かに目をつぶって、何回か頭をふってから「お金はどうにもならないからね」と、言いました。  すごく低い声でした。  すごく恐い声でした。  すごく重たい声でした。  そんな声はもう聞きたくありません。  だからわたしはお金持ちになって、そんな声をお父さんに出させたくないと決めました。  だからわたしは――――
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