2章 殴る男。

2/3
45人が本棚に入れています
本棚に追加
/71ページ
付き合って1ヶ月は幸せな日々だった。 いつどこに行っても優しくエスコートしてくれたし、ご飯もいつもごちそうしてくれて、車で送り迎えもしてくれた。 子どもが大好きで小学校の教員免許を取るべく大学に通っていること、高校時代はラグビー部で有名私立大学から推薦をもらえていたこと、だけど糖尿病の母のために諦めて地元の市役所に就職したこと、空手の世界大会で入賞したこと… いろんな話をしてくれた。 年上の彼は時に子どものようにかわいかった。 そしていつしか寮よりも彼の家から大学へ通うことが多くなったのだ。 彼は実家暮らしで、一軒家の一階に母親、二階に彼が生活していた。父親は転勤族で県外に一人暮らし。あ、猫のミーもいた。変な猫だった。 きっかけは何だったか思い出せない。 すごくささいなことだったと思う。 夜、台所で彼にビンタされた。
/71ページ

最初のコメントを投稿しよう!