第1章 上司と部下

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佐伯さんが会議室を出て行って、他の社員も後を追うように出て行った。 そして、鹿野さんも。 待って待って…!! 「鹿野さんっ」 大きな声で呼び止めた。 でも鹿野さんは、私を無視してそそくさと出て行ってしまった。 ありえない。何で無視するの?! 自分のミスなんだから、せめて私にくらい謝ってよっ…。 どうしても怒りが収まらず、手に持っていた資料を破いてごみ箱に捨て、会議室を出た。 きっと仕事に戻っても何もやらせてもらえないから戻る必要はない。エレベーターのボタンをバンバン押して一人で屋上に向かった。 いっその事、この会社を辞めてしまおうか? でも、こんな事で辞めたくないっ。 辞めたら生きていけない。 悪いのは鹿野さんなのに、鹿野さんのミスをかぶってやめるのも絶対に嫌。 でも…、 鹿野さんのミスだっていう証拠はどこにもない…。 もともとミスの多い自分が疑われても仕方ないか………。 本当に…、違うのにな。 屋上から見える綺麗な空…。 青く澄んで、たまに吹く冷たい風が気持ちいい。 もう、ずっとここにいたいよ。 ここにいたい。 …なんて。そんな事できる勇気もなく、少しだけ頭を冷やしてオフィスに戻ると決めてフェンスにもたれかかった。
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