第1章 上司と部下

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屋上だからか、耳慣れた騒音も聞こえない。 私だけ違う空間にいるみたい……。 今から仕事に戻っても…何もやらせてもらえないのは辛いな…。 私がいる意味、あるのかな? 鹿野さん、ただ単に真面目な人だと思っていたけど、印象がガラリと変わってしまった。 もっともっと苦手になった。 化粧っ気が無く、髪型も古風な感じで冗談も言わない人。絶対彼氏もいないよねっ!! 私もだけど。 「藍子!やっぱりここにいたっ!何やってるのっ!」 パッと声のする方に視線を向けたら、麻衣子がいた。 「藍子が戻ってこないって水口さん達が探してるよっ」 探してる…? 「怒られて仕事が嫌になって無断で帰ったのかもって」 腕時計を見たら15分くらい経っていた。中々重い腰が上がらず鹿野さんの事を考えていた。 「戻りたくない…。どうしよう」 きっとこんな私、もうクビだ…。 解雇だ。 朝から寝坊して、佐伯さんに怒られて、仕事も取り上げられて、最後には逃亡疑惑。 情けないな、自分。 麻衣子も呆れ顔。 麻衣子には本当の事を言いたい。 「あのねっ」「早く戻らないと佐伯さんにまで伝わっちゃうよ!」 まだ佐伯さんは私が逃亡した事を知らないの? 「今なら間に合うから早く戻ろうっ!」 「でもっ…」 鹿野さんの顔を見たくないっ。 鹿野さんと一緒に仕事したくないっ。 「早くっ!!!私まで怒られちゃうっ……!」 麻衣子に促され、背中を押されながら歩き、エレベーターに乗り込んだ。
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