第8章 上司の過去

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開けっ放しだったドアの前にいるのは、帰ったはずの佐伯さん。 動きが止まったままの私に近付いて来る。 「できたのかって聞いてるだろ」 私が発注書を作ってた事、川島さんに聞いたの? 「できました」 「あっそ。じゃ行くぞ」 行く…? 「どこに…ですか??」 目の前まで来た佐伯さんをジッと見つめた。 「いいから早く帰る支度をして来い!」 「はいっ…」 佐伯さんに低い声でそう言われ、急いでロッカーに向かった。 もしかして佐伯さん、私を迎えに来てくれた?? 莉穂さんとはもう会ったの…? 今までどこにいたの? 気になって仕方ない。 ロッカーでコートを着てカバンを持って、エレベーターの前に立つ佐伯さんの元に走って戻った。 「……お前のせいで今日の計画が台なしだ」 そう言いながら下矢印のボタンを押す佐伯さん…。 「計画……?」 私が聞き返したら「そーお!」と言って、冷たい手で私の頬っぺたをブニブニ引っ張った。 いつもの佐伯さんだ……。 「痛ひへふっ」 言葉にならない。 でも“計画”って、今日は私と会う気でいてくれたって事……? そう思ったら、胸がキュンと痛くなった。
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