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けど、遅かった。
自分の部署に戻ったら、スケジュールボードの前に腕を組んで立っている佐伯さんがいた。
麻衣子の足も止まる。
「あちゃー、いるじゃん、佐伯さん」
「バレてるかなっ?」
ふと佐伯さんが私のネームプレートを退勤のほうに移動させた。
完全にばれている。
「怒られる前に謝っておいでっ」
麻衣子が私の背中に隠れながら私を前に押し出し、自分のデスクに戻って行った。
グループのみんなも戻って来た私を見て声を出さずに身振り手振りだけで早く佐伯さんの元へ行けと言っている。
もう行くしかない。素直に謝るしかない。屋上に逃げた私が悪い。
「すっすみませんでしたっ…」
佐伯さんの元へ行き、佐伯さんが振り返る前に90度以上に頭を下げた。
「お前…帰ったんじゃなかったの?」
「帰ってないですっ…屋上で頭を冷やしてましたっ…」
「もういいよ。帰っていいから」
そんなっ……。
「帰りませんっ、本当にごめんなさいっ…」
自分のデスクに戻る佐伯さんに付いて歩いた。
「本当に…頭を冷やそうと思っただけで……」
「…ったく」
佐伯さんが小さくなってる私を見ながら、ガタンッと音をたてて椅子に座った。
「お前さぁ……仕事のミスは仕事で挽回する、そういうものじゃないのか?そういう考えは出来ないの?」
仕事で挽回って…ついさっき私に仕事をするなって言ったくせに。
訳が分かりません。
「頭を冷やすのはいいけど誰かに一言伝えればみんな探し回らずに済んだだろーが」
佐伯さんの説教がタラタラ続く。
「お前の勝手な行動のせいでみんな仕事の時間が押してくんだぞ。時間制限がある打ち込みだってあるのに」
それは本当に申し訳ないと思っています。
「聞いてんのかっ!」
「はいっ!!」
聞いてるよっ…!!いきなり大きな声を出さないで欲しい。
ビクビクしている私に、佐伯さんは更に説教を続けた。
長い長いお説教。
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