第2章 上司の優しさ

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「おい、どうした急に黙って。酔ったのか?」 赤信号で車が停車し、佐伯さんが私を見ていた。 「いえ………」 「そうだお前。昼メシ食ってねーだろ。ほら」 佐伯さんが助手席の足元に置いてあった紙袋からメロンパンを出して私にくれた。 「いいんですかっ?!」 嬉しいっ!!佐伯さん、素敵!さすがイケメン鬼上司! 「どーぞ」 メロンパンがキラキラ光ってる…!! 私の命の源だ。 袋を開けておっきな口でがぶりついた。 「おいしーいっ!!!」 こんなにおいしいメロンパン、初めて食べたっ。 「どこのメロンパンですかっ!」 感激しながら聞く私に佐伯さんはまた冷ややかな目をして教えてくれた。 「会社の前のコンビニ」 コンビニ?? パッケージをよく見てみたら、何度も食べた事があるメロンパンだった・・・。 恥ずかし…。 また黙ってがぶりついた。 横から、クックックッと笑い声が聞こえてくる。 佐伯さんに笑われている。穴があったら入りたい。今日は散々だ。 「お前ってホントにバカな奴だな~お前みたいな部下は初めてだよ」 ……私も佐伯さんがそんなふうに笑うの、初めて見ました。 鬼上司の面影が、なくなってしまう優しい顔。 いつもいつも、そんなふうに笑ってたらいいのに。 「私みたいなって…どんな部下ですか……?」 少し気になって聞いてみた。
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