第2章 上司の優しさ

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取引先を3軒回った所で時間を確認したら、午後5時半前だった。 あと残りの封筒は5つ。 完璧、間に合わない。 次の取引先までの移動中に、青木君にメールを打った。 …………………………… ごめんね。 外回りしてるから帰れない。 今日は行けないよ。 明日でもいいかな? …………………………… 5分もしないうちに青木君から返事がきた。 …………………………… 了解! 頑張れよ。 明日は俺が残業かも。 また連絡する。 …………………………… 残念! 明日は青木君が残業か…。 仕方ない、諦める。 「着いたぞ」 佐伯さんの声で顔を上げると、目の前に大きな病院が立ちはだかっていた。 市立中央病院…。 変に胸が痛む。 「どうした?早く下りろ」 「はい…」 避けては通れない道。 過去の記憶と向き合う事くらい、簡単だよね? 車から下りて、ドアを閉めた。 受付を通って、事務室へ…。 佐伯さんを知っている看護師さん達が次々と声をかけてきた。 その度に愛想よく話す佐伯さん。 たまに私に話を振ってくれたりして、側から見れば理想の上司。でも、本性は鬼ですよ。 仕事をしている時間は楽しくて、さっきの変な胸の痛みはすぐに無くなった。 …………だけど。
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