第2章 上司の優しさ

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車に乗り込んで次の取引先に向かう道中、佐伯さんはまた黙ったままずっと前を見ていた。 FMラジオからは賑やかな曲が次々流れてくるのに車内は気まずい雰囲気………。 そんな状況が改善される事はなく、午後7時半に全ての取引先を回り終えた。 ここで解散かな…。 近くに地下鉄の駅があるから帰れない事はない。 佐伯さんが車の運転席に乗り込んで、エンジンをかけた。 私も一応、助手席に座った。 「今日は…終わり…ですよね??」 「あぁ」 「私、地下鉄で帰ります。すぐそこに駅があったので。お疲れ様でした!」 そう言って、車を降りようとした。 「待てコラ!」 佐伯さんを見たら、また怒った顔をしている。 「な、何でしょう?」 まさか、今から今日一日の説教………?! 「飯…食いに行こーぜ」 「飯……??」 ご飯??佐伯さんと?? 驚いた。 佐伯さんに誘われている。 「俺とじゃ嫌か?」 「いえっ…」 嫌だけど……嫌では無い。 ただ、緊張する。 仕事以外で佐伯さんと二人きりだから、余計に。 「何か食いたいもんある?」 今日の私は焼肉モード。 でもそんな事、言える訳もなく・・・。 「何でもいいですっっ」 そう言って、ドキドキしながらシートベルトを締めた。
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