第2章 上司の優しさ

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佐伯さんが車を停めた場所は、高級そうなイタリアンレストランの前。 かなり値も張りそう。 私、財布の中にいくら入ってたっけ??? 足りるかな?! 「いらっしゃいませ。2名様でよろしいですか?」 「はい」 店員さんと簡単なやり取りをしたあと、奥の席に通されて、佐伯さんと向かい合って座った。 この緊張感、どうにかならないかな。 どこを見ていいか分からない。視線が定まらない。 メニューを渡されて、ホッとしてゆっくり開いた。 やっぱり高い…。 「今日のお詫びにおごってやるよ」 え…? お詫び……?? 「何のお詫び…ですか…?」 キョトンとする私を困ったように眺めている佐伯さん。 「だから…その……」 何だろう…? 私、佐伯さんに何かされたっけ? たくさん説教はされたけど、悪いのは全部私だし、他に思い当たる事がない。 「今日…エレベーターで…」 気まずそうに佐伯さんが口を開いた。 エレベーター?? 「お前に悪い事を言ったから」 悪い事? まだ分からない私に、直球が飛んできた。 「親父さん、亡くしてたんだろ?甘やかされて育った…なんて言って悪かった」 あー!思い出した……! 私が“お嬢様育ち”…だっけ。 シュンとしている佐伯さんの姿に見慣れていなくて、どうしていいか分からない。 この状況はいつもと逆だ。私の方が有利な立場にいるなんて、この先二度とないかもしれない。 何だかおかしくて笑ってしまった。 「お前な~人が謝ってるのにその態度は何だ」 「すみません……」 結局また私が謝ってるし…。 「いや、俺が悪い。申し訳ない」 佐伯さん…!いつもと違う! 「私は大丈夫です」 怒ってる佐伯さんは嫌いだけど、こっちの佐伯さんは好き。 こんな一面もあるんだね。
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