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佐伯さんが怒ってないと分かったら気が楽になった。
「本っ当に奢りですか??」
ラッキーだと思って、お言葉に甘えてしまおう。
そう聞く私に佐伯さんは自分のメニューを見ながら頷いた。
「足りなかったらお前が体で払ってけ」
「え?!」
「バーカ、嘘に決まってんだろ。早く決めろっ」
「はいっ!」
一瞬にしていつもの佐伯さんに戻ってしまった。
でも何だか楽しい……。
「俺、肉のコースにしよ」
「私もお肉がいいですっ!」
「お前さ~女ならかわいくパスタとかリゾットとかそっち系じゃねーの?」
「だって…今日はお肉モードですもん」
「何だそのモード。本当にお前って変な奴だな」
グチグチ言いながらも結局佐伯さんは同じ物を二つ頼んでくれて、私も満足顔でメニューを店員さんに返した。
すぐにサラダやスープが運ばれてきて、手を合わせた。
「いただきますっ」
幸せ~!!!!
「旨そうに食うなぁ~。転職してグルメリポーターにでもなったらどうだ」
私の食べっぷりに引いている様子…。
「嫌ですっ!!佐伯さんこそサラリーマンより教師になればよかったのに」
「はぁ?何で俺が教師なんだよ」
“説教好き”だから……!
何も答えない私を、佐伯さんは怪訝そうに見てる。
「いい意味じゃねーだろ?おい、コラ」
またまた笑えてくる。
突然降って湧いた楽しい時間…。
佐伯さんがいつもより優しくて、
それにも何だか幸せを感じた。
小さな小さな、幸せ。
どんなに小さな幸せでも、
私はそれを、一つ一つ大切にする。
それは私が一人になってから、ずっとずっとしてきた事。
後悔したくないから。
後悔しない為に。
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