第2章 上司の優しさ

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私が一人暮らしを始めたのは、半年前。 それまで、親戚の家にいた。 父親の遺言に、大学を卒業するまではどうしても私の面倒を見て欲しいと書いてあり、保険金は全て学費にあてた。 親戚の叔父さんと叔母さんはそれが気に入らなかったみたいで…。 就職が決まったと同時に家を追い出され、会社が契約しているアパートを紹介してもらって今に至る。 のけ者扱いをされていた生活からの開放感は凄まじく、ありふれた日常がこんなにも幸せだったのかと心底思った。 朝のんびりとコーヒーを飲めるだけでも幸せ。 帰ってきて、好きなテレビを見れるのも幸せ。 ゆっくりお風呂に入って半身浴ができるのも幸せ。 好きな時に好きな事が出来るのが一番幸せ。 小さな幸せがいっぱいある毎日は、本当に楽しい。 考えてみれば、麻衣子との出会いもそう。青木君を含む同期との出会いも、幸せの一つだ。 やっとやっと人間関係に恵まれた…そんな感じ。 「おい…たらふく食っておかしくなったか?ニヤニヤ笑って気持ち悪いぞ、お前」 本日何回目かの佐伯さんの冷ややかな視線…。 「…すみません」 幸せについて考えていた。恥ずかしい。 「デザートも頼むか?」 デザート?? 佐伯さんがデザートのメニューを見せてくれた。 「わ~っ、おいしそ~!!」 迷う迷う…。 「佐伯さんは??」 「俺はもういい。食えねー。食べるならお前一人でどうぞ」 何だか私、大食いの人みたい? でもデザートも食べたい!! 「ドルチェセットでお願いしますっ」 佐伯さんが吐きそうな顔をした。 「信じられね……」 だって、ご飯とデザートは別腹ですから。今からケーキ3ついただきます! .
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