第2章 上司の優しさ

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食後のコーヒーを飲みながら、佐伯さんは私にいろんな事を話してくれた。 佐伯さんが新入社員だった頃の事、同期がした大きなミス、小さなミス。今まで会社内で起きたトラブルや、管理職達の上下関係。 今から私に起こりうるマイナスの出来事を予測して話してくれている気がした。 だから大事な仕事は特に慎重に、丁寧に、気を抜かずに取り組め…と。 そして、大学時代の話しも少し出た。佐伯さんはテニスサークルに入っていたらしい。 絶対にモテモテでしたよね?聞かなくても分かる。 でも、川島さんの話しは出なかった。 佐伯さんと話をしながらいつ自分に話しを振られるのかビクビクしていたけど、結局佐伯さんは最後まで私に何も聞いて来なかった。 それは佐伯さんなりの気遣いなのか、ただ単に私に興味がないだけか…。 たぶん後者だろうけど。 大人だなぁと思った。 一日中説教をされてきたけど、こんな時間を作ってもらったら恨む事なんかできる訳がない。 これがまさしく飴と鞭? “嫌な上司”から、“素敵な上司”に早変わりしてしまった。 鬼上司だなんて命名して本当にごめんなさい。 佐伯さんが伝票を持って立ち上がった。 「ご馳走さまでしたっ!」 「お口に合いましたでしょうか?」 「もちろんですっ…すっごく美味しかったです!!」 また誘ってくださいっ…、は心の中に留めておこう。 相手は毎日顔を合わせる直属の上司だ。 軽い気持ちで軽い言葉を口にするのは怖い。 本音が入っているから、余計に怖い。 上司と部下の関係を崩したくない。
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